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高齢者の5人に1人が認知症の時代、重くなる家族の責任と介護業界で働く意義

投稿日:2018年7月9日 更新日:

1.65歳以上の20%が認知症になる時代へ

少子高齢化が進展していく中、社会的にも、私たち一人ひとりにとっても、大きな影響を及ぼす問題の一つが、「認知症」ではないでしょうか。

認知症がもたらす社会的なインパクトを端的にお伝えするため、経済的損失について考えてみましょう。厚生労働省研究班の推計によれば、日本で認知症にかかる医療費、介護費、家族による介護を金銭換算したコストの総計は年間約14.4兆円に上るとされています。

金額が大きすぎてあまり想像がつかないかもしれませんが、例えば、日本で毎年発行される赤字国債(国の財政の赤字を補填するために発行される国債)の金額は、近年、約28兆円(当初予算ベース)で推移しています。したがって、極論を言うと、もし、認知症が存在しなくなれば、日本の財政赤字が半分で済む可能性があるといえるかもしれません。

では、実際に認知症になる高齢者はどのくらいいるのでしょうか。内閣府「平成29年版高齢社会白書」によると、2025年には65歳以上の高齢者の約20%が認知症になると推計されています。普段、街で見かける高齢者の5人1人が認知症である世界を想像すると、深刻さが伝わってきますね。

一方で、2012年時点の認知症患者数は462万人で、65歳以上の高齢者の7人に1人の割合です。
つまり、認知症患者数は高齢化率の伸び以上に増加していくことになるのですが、その原因は、明らかになっていません。
いずれにしても、今後急速に認知症の問題が深刻化していくであろうことはお分かりいただけるかと思います。

2.認知症高齢者が起こした事故は家族の責任へ

では、私たちにとって認知症が身近になることは、日常生活においてどのような影響を及ぼすのでしょうか。

2007年、当時91歳の認知症の男性が一人で外出し、線路に立ち入ったところに列車が接触して死亡するという残念で痛ましい事故が起こりました。そして、鉄道会社はこの男性の妻と長男を相手に民事訴訟を提起し、事故により列車に遅れが生じたことで損害を被ったと主張して、約720万円の損害賠償金の支払いを求めたのです。

最終的に、最高裁判所は、男性の妻と長男の賠償責任を認めず、鉄道会社の請求を棄却する判決を言い渡しました。
しかし、1審、2審では男性の妻や長男の損害責任を認定し、損害賠償金の支払いを命じる判決が出ました。

この裁判は、認知症高齢者の家族に対する監督義務(民法714条:責任無能力者の監督義務者等の責任)が争点になったものですが、日ごろから献身的に介護を続けてきた家族に対し、目を離したほんの数十分の間に認知症高齢者が起こした事故の責任までも負わされる可能性があるという事実に、当時、大きな反響を呼びました。

もし、私たちの家族が認知症になってしまったとき、一体どうすればよいのでしょうか。
ひとたび認知症高齢者が事故を起こすと、徘徊(はいかい)を防止する措置を講じなかったとして監督義務を怠ったものとされ、全ての損害賠償責任を負わされるのであれば、愛する家族を部屋に閉じ込め、鍵をかけるしか方法はないのでしょうか。

3.認知症の正しい理解と介護業界で働く意義

先ほど取り上げた認知症高齢者が起こした鉄道事故に関する裁判が、日本の社会に突き付けた課題はとてつもなく大きいものですが、残念ながら唯一無二の正解はありません。
認知症の家族の立場で物事を考えると前述のとおりですが、このような事故の責任を全て企業に負わせることは酷だという意見もあります。
本来、社会的に保障すべきかもしれませんが、日本の財政的な余力や制度創設の機運は十分とはいえません。

そんな中、私たちにできることは、来るべき時に備え、認知症の正しい理解を深めていくことではないでしょうか。
認知症とは、どんな症状が出て、どのような対処方法があるのか。そして、認知症患者はどんな気持ちでいて、どうしたら尊厳を守ったまま暮らしていけるのか。まずは、認知症を正しく理解をすることが重要となります。

仕事を通じてこうした認知症に関する理解を深めることができるうえ、実際の認知症介護を体験し、対処法を身に付けることができるのは、介護業界をおいて他にありません。
介護の仕事に就き、認知症介護に関する専門性を磨くことは、今後、認知症の問題が深刻化していく状況を踏まえても、大きなアドバンテージが持てるキャリアであるといえます。

4.まとめ

決して他人事にはできない、迫る認知症問題の脅威に立ち向かうには、まずは正しい理解を身に付けることが重要であり、その意味で介護業界はうってつけのフィールドといえます。

また、認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」(詳しくは、厚生労働省HPを参照ください)など、介護業界で仕事をしなくとも、認知症を学べる機会はあります。
まずは、手始めにこういった講座を受講することから始めてもよいかもしれません。

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