特別養護老人ホーム(※以下、特養)で働くヘルパーは日々、一人でたくさんの利用者をフル回転で介護しつづけていますよね。
時間も人手も足りない状況で働く中で、「もっと利用者一人ひとりと向き合って介護がしたい!」と考える方も多いと思います。
そんな、志を持つヘルパーにオススメしたいのが、特養からデイサービス(※以下、デイ)への転職です。
ただし!
様々な性質を持っているデイは、今まで施設介護をメインに働いてきたヘルパーにとっては、壁の多い職場です。
では、特養からデイへ転職する際、どうすれば失敗しないのでしょう?
ここでは、ヘルパー歴10年の私から見た、特養からデイへ転職する際に、現場で役立つ知識とリサーチ法・注意点をいくつかご紹介します。
特養とデイ、ヘルパーの役割の違いとは
みなさんは、デイで求められるヘルパーの役割や、利用者に関わる他職業の方々との繋がりをご存知ですか?
デイは通所介護とも呼ばれます。
デイとは、介護を要する高齢者の方たちが在宅で生活をしながら、リハビリ(※以下、リハ)や心身状態の改善を行うために利用する施設です。
デイと一言でいっても、トレーニングマシンを使用した本格的なパワー系リハをメインに行うデイもあれば、ボール投げや塗り絵、書写といった作業療法リハがメインで、食事や入浴に力を入れているデイもあります。
特養とデイでは要介護者の背景が全く違います。
ですから介護職員の現場での立ち位置や連携方法、トラブルの解決方法も少し異なってきます。
服薬管理の違い
特養では専属ケアマネージャー(※以下、ケアマネ)がいるので、窓口としていつでもアレコレ相談が出来ますし、看護師も数人常駐しているので、常に連絡が取れる状態にあります。
よって、利用者に身体面のトラブルがあった際に、介護職員の自己判断を要求されるシーンがあまりありません。
例えば服薬に関しても、特養では徹底して看護師が管理しているので、もし「今日の昼に飲む降圧剤(血圧を下げる薬)が無い」と言う場合は、看護師に報告するだけでいいのです。
連絡だけで解決しなかった場合はまた看護師から報告を受け、次の勤務の職員に申し送ります。
特養では、こういったシーンでヘルパーが直接ケアマネに報告したり家族に電話するなどといった行為は、入居者の命にかかわるような、よほど急を要する事態でなければ行いません。
代わってデイでもし同じトラブルが起こったとします。
デイも看護師が常駐しているところがほとんどですが、服薬の管理に関しては
- 自分で出来る人
- できるのかできないのか判断しがたい人
- 全くできない人
など、状態がバラエティに富んでいるので、対応にも柔軟性が必要となってきます。
デイ利用に際しての服薬に関する希望調査において、ある程度の管理環境は家族もしくは本人、看護師とケアマネで相談済みの状態でヘルパーが連携してサービスを開始するのですが、デイでは要支援でしっかりしていた方がある日うっかり家に大事な薬を忘れてきてしまう事も。
また、重度の要介護状態である利用者の家族が、デイの準備に薬を入れ忘れてしまうなど、特養とは違い、薬1つが無いという事由も利用者によって様々です。
服薬に関する対応も人それぞれで、利用者が「飲み忘れても大丈夫」と自己判断したら尊重することもあれば、「今すぐ家族さんに連絡!」と職員があわてて家族に直接電話をすることもあります。
特養とデイのヘルパーの役割の違いは、以上のような個別性への対応です。
最初は、利用者の介護計画書やサマリー(※病院での診療記録のコピーがファイリングされた個人ファイル)を熟読することをオススメします。
特養にはないデイに学ぶ在宅介護のケアについて
特養では行わなかった業務が、デイにはたくさんあります。
利用者の既往歴(※これまでにかかった病気の記録)・介護記録など情報収集に加え、利用曜日・送迎もする場合は経路の暗記、入浴や食事の有無も覚えます。
レクリエーション(※以下、レク)の準備は社員の務めで、ホワイトボードを使った頭の体操のネタ収集や、手作業のレク準備や管理。
誕生日会では、写真を撮ってその日にお持ち帰りしていただけるよう、通常業務の水面下でプリントアウトや手紙書きに追われます。
季節が変わるごとに廊下や目のつくところに折り紙や切り絵でディスプレイを作ることもあります。そして業務中に利用者用の介護日誌にバイタルや今日の様子を記入します。
これは家族と同居、または家族がちょくちょく様子を見に来る利用者限定のお話になりますが、特養と1番違うところは、この介護日誌一つにしても、家族とのつながりがあるところです。
老々介護であったりすると、デイのヘルパーも家族の一員のように思ってくださる方もいるケースもあるほど。
デイには在宅で1人暮らしをしている利用者もたくさんいるのですが、同じ要介護3だったとしても特養で生活している方とは違い、在宅のお年寄りはプライドが高く、対応が難しい場合があります。
在宅高齢者の中には「本当は誰の力も借りたくない。だけど足元が不安定だから、不本意だけどデイを利用する。」という心持ちの方も大勢いらっしゃるからです。
また、利用者ご本人は大変大人しい人柄であったとしても、その家族が排泄介助から入浴・着脱の仕方まで、送迎の度にヘルパーに細かく注意するケースもあります。
在宅介護でのケアをヘルパーとして臨む場合、そのような「個別性」「多面性」「家族との折り合い」などに配慮していく必要があります。
特養からデイへ転職すると給与ダウンの可能性は高い…
転職にあたって、重要なのが給与・年収ですが、
特養からデイサービスへ転職する場合、特養の方が昇給率やスキルアップに関するサポートが整っており、夜勤手当もあるため、給与ダウンする可能性が高いでしょう。
平成27年度の介護労働実態調査によると、施設ごとの給与データは以下のようになっています。
- 特養…239,449円
- デイ…210,046円
- デイケア(通所リハビリテーション)…224,243円
- 小規模デイ(地域密着型通所介護)…206,284円
- 認知症対応型通所介護…203,248円
上記にあるように、デイサービスにはデイケア(通所リハビリテーション)・小規模デイ(地域密着型通所介護)・認知症対応型など、サービスによって細かく分類されます。
- デイケア…デイケアとは、リハビリがメインのデイです。リハのみ行い、入浴や食事を提供しない施設もありますし、すべて行う施設もありますが、基本重点の置いているのがリハビリであるというコンセプトです。要支援の方も利用できるのが大きなメリットです。
- 小規模デイ…19人以下の小規模であることが条件の地域密着型のデイ。在宅生活の支援をするべく食事・入浴・排泄はもちろんのこと、機能訓練やレクも行います。要支援者は利用できません。
- 認知症対応型…認知症という疾病に対し専門的知識を持ったスタッフがケアに当たるデイです。認知症が進行すると、デイケアなどで他の利用者とトラブルになったりすることが増え、デイに居づらくなるケースも多くあります。事故を防ぐとともに専門スタッフによるケアを受けることで、認知症の進行の緩和をはかります。
以上のように、デイサービスという大分類の中でも、施設によって業務内容に違いがあります。
転職される際は、業務内容や環境など、良く確認することが大切です。
まとめ
特養からデイに転職をお考えの方にとっては以上のような環境の違いがあることが、お判りいただけましたでしょうか?
またデイにも種類があるので、あなたにとって一番ピッタリな規模・体制・メインの介護に注目し、給与や待遇面と併せてじっくり考えてください。
面接でも、担当の方にしっかりとデイの見学をさせてもらい、自分に合った職場選びをしてくださいね。
デイサービス体験オススメ記事:
https://townwork.net/magazine/job/expert/o_expert/18732/