働きながら資格を取るのは時間も労力も大変ですよね。特に子育て中は「子どもに手がかかるから」「もう少し子どもが大きくなったら考えようかな……」と先延ばししがちです。
介護士になったら一度は考える『介護福祉士』の受験。今までは、3年の実務経験のみで受験ができました。
しかし、2017年の1月の試験から介護福祉士の受験資格が変わりましたよね。実務経験3年に加えられたのが、実務者研修です。
受験資格が変更されたばかりで、まだまだ「介護福祉士は実務経験3年でとれないの?」と言われているのが現状です。
現在、5歳と2歳を保育園に預けて平日介護士をしている筆者から、実務者研修のリアルと豆知識を紹介します。
来年受けたいなら前年8月までに申し込みを!
介護福祉士を受験しようと思ったのが8月中旬でした。インターネットで介護福祉士の受験資格をチェックして初めて『実務者研修』取得しなくてはならないことを知り、あわてて実務者研修のスクールを検索して、9月~12月末に研修が修了するスクールを見つけました。
翌年の1月の介護福祉士の試験に間に合うためには、12月までに実務者研修の講習を修了していなくてはなりません。
平日は介護の仕事があるので、受講は休日のみのクラスがあるところを探しました。
筆者の場合は、今の生活スタイルでは申込み時期が本当にぎりぎりでした。
受講費用のリアルと申込みのおすすめ時期
実務者研修は、平均13~15万と言われていますが、スクールによって費用は違います。
また、各スクールでキャンペーン等を行っているので、意外と安く受講ができるケースもあります。
筆者は、たまたまキャンペーン中だったスクールに受講を決めましたので、費用は10万円弱。
必ずしも全員が該当するわけではありませんが、参考までに筆者の申し込みをしたタイミングを紹介します。
筆者が申し込んだのは、来年受験できるギリギリの7~8月。
通学ペースは、1~2週間に1回程度でした。
「子どもが熱を出して一時保育が難しいかも…」
「仕事で急きょ出勤になる可能性がある」
などの心配がある方は、早めの受講スタートがおすすめです。
もちろん、早めに申し込んで通学すれば、その分通学のペースにゆとりができますよ。
『テキスト代別』わかりにくい実務者研修の費用!電話で確認が確実!!
低予算で受講できるスクールもありますが、気を付けたいのは多くのスクールが(テキスト代別)と記載しているところ。
「格安」と受講を謳うスクールもありますが、テキスト代はスクールによって大きく違うようです。
参考までに筆者の場合、テキスト代は2万円程度でした。
各スクールによって差がありますので申込み時、電話で確認することが大切です。
実際に通って分かった!どこのスクールに通うか決めるときの7つポイント
インターネットで、実務者研修講座を検索すると、たくさんのスクールがでてきます。いろいろあって迷ってしまいますよね。筆者も迷いました。
どのスクールに通うかを決めるときに、事前にチェックしておくべきポイントをまとめました。
受講日は無理なく通えるか
受講の費用と支払い方法
受講の貸付金制度の利用について
通学手段は?
医療的ケアはどこで行うのか
振替え講習の費用
自宅学習でのレポート提出について
受講日は無理なく通えるか
各スクール、「働きながら取得できる」と謳っていますが、介護士のシフトは様々ですよね。夜勤がある方もいれば決まった休みが日曜日のみの方もいるでしょう。
『最短○日で受講できます』というスクールもありますが、自宅学習+通学学習を450時間をクリアしなくてはなりません。
また、既に持っている資格によっても学習時間が大きく違います。
あるスクールでは、介護職員基礎研修修了者なら実務者研修に費やす時間は50時間の受講でOKだそうです。
実務者研修を受ける方のほとんどは、介護職員初任者研(ヘルパー2級)を持っていれば320時間でOKです。
実際に、筆者のスクールは複数の校舎があり「休みが取れると思ってた日が取れなかったから別の校舎から振替えで今日だけ受講している」という人も複数見かけます。
申込みの時点で全日程がわかるはずなので、すべて無理なく受講可能か確認したほうが良いでしょう。
どうしても休まなければいけないとき(体調不良)なども考えられますので、振替えの授業は可能なのか、その際の費用もチェックしておきましょう。
受講の費用と支払い方法
受講料の支払い方法、気になりますよね。最初にまとめて払うこともできるようですが、スクールによって分割も可能です。
分割の場合、申込み段階で一部支払います。(筆者の場合は2万前後だったと思います)
貸付金制度の利用について
記事の後半で紹介しますが、介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度 ↓を利用する場合、一定の条件をクリアすれば、受講料が免除されます。
貸付制度へ申請しておけば、受講期間中に認定されるので、分割で支払いにしておけば、お財布の負担も軽くなりますよ。
介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度については、申し込みの際に利用する意思を伝えておいた方がよいです。
筆者の場合、スクール申込み後に送られてくるテキストと一緒に、在学証明書を送ってもらったので、申請はスムーズでした。
書類の記載でわからない部分は、スクールが教えてくれますよ。
通学手段が車の場合は要注意
通学する際、きっと自宅から近い場所を探される方が多いですよね。
また、スクールのホームページなどで『○○駅が最寄の○○校』などと記載されていても、実際に向かってみると距離がある場合もありますので、グーグルマップなどで確認が必要です。
車で通学を考えている場合、駐車場がないスクールが多いので、申し込みの際に確認しておくほうが良いですよ。
医療的ケア演習の実施場所について
実務者研修の中に、『医療的ケア演習』という授業があります。医師や看護師以外には認められていなかった「たん吸引」や「経管栄養」。これらの医療的ケアの基礎的な知識を学びます。
しかし、スクール行われる医療的ケアの授業だけは、他の演習会場で行うパターンが多いです。筆者も別の校舎に通学して看護師から演習を受けました。
演習では、人形などを使って痰吸引や経管栄養の方法を学びました。一クラス6~8名で行いました。
医療的ケアは、使用する物品や手順など覚えることが多かったです。先生からのチェックに合格しないと再試験になる方もいました。
あらかじめ、テキスト等で事前に予習しておくことをおすすめします。
振替え講習の費用
受講中、体調不良等で休む方は多いようです。筆者のクラスにも体調不良で休んだから振替えで同じクラスになった方も多かったです。ほとんどのスクールが無料で振替え講習OKです。
しかし、注意したいのは医療的ケア等の授業内で行われる試験などに合格できないと再試験の費用がかかる場合もあります。
筆者のスクールの場合、中間試験で3回不合格になると、3~4千円の再試験費用がかかります。
……とはいえ、講師の話では中間試験に3回不合格になる方はほとんどおらず、大抵1~2回で合格できるようです。他のスクールも、大きく変わりはないので安心してくださいね。
自宅学習について
実務者研修は、『自宅学習』と『通学(医療的ケアを含む)』で構成されています。自宅学習は、申込み後に送られてきたテキストを参照にスクールから送られてきた課題を解くことです。
実際に、課題を行いましたが難しいことはありません。答えはテキストに載っていますし、わからなければ通学した際に質問してもOK。スクールによっては質問をEメールで受け付けてくれるところもあります。
自宅学習の課題は、介護福祉士試験の勉強にも繋がります。面倒ではありますが、合格のために課題はこなしておきましょう!
20万円以内の助成制度!まずチェックするべき介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度
介護福祉士を取得するための費用負担軽減を目的とした貸付制度があります。簡単に言えば、受講費用を貸してくれる助成制度。筆者も申し込みました。
介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度を利用するにあたって注意点もあります。貸付金制度なので、返済しなくてはなりません。しかし、返済免除になる条件があります。
介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度の返済が免除になる2つの条件
返済免除は、上記二つの条件をいずれも満たさなくてはなりません。
貸付金の上限金や2つの条件の詳細な機関には、各県で差があるようです。神奈川県は、貸付金の上限は20万でしたが京都府は15万でした。詳しくは、各県の社会福祉協議会に問い合わせてみてください。
また、費用を抑えられる嬉しい制度ですが、全国で行われているわけではありません。
下記の全国老人施設保険協会ホームページをみると、各都道府県の貸付制度について、調べることができます。
なぜ介護福祉士の受験資格に実務者研修が必要になったのか!?3年の経験だけではだめ?
実務者研修自体は、2013年4月からスタートしていましたが実際はよく知らない方も多いのではないでしょうか。2013年に今までの『ヘルパー2級』が『介護職員初任者研修』に変更されましたよね。
この時、一緒にホームヘルパー1級と介護職員基礎研修が『介護職員実務者研修』になりました。
介護福祉士は、ヘルパー2級からでも目指せる資格でしたが養成までの道のりが多様で複雑でした。『介護職員実務者研修』に一本化したことで介護福祉士への道をシンプルにしたのです。
厚生労働省が発表した2011年の今後の介護人材養成の在り方に関する検討会報告書概要には、介護人材のあり方のひとつに実務者研修は働きながら受講できる環境整備があげられています。
主な受講の環境整備
通信教育の活用
身近な地域で研修を受講できるための環境整備
過去に受講した研修(ホームヘルパー2級等)を読み替える仕組み
受講費用の支援
今までは、介護福祉士は3年の実務経験のみで受験資格がありました。いくら働きながら取得できる環境を整えたと言っても、働く介護士たちには介護福祉士の取得が困難になってしまいますよね。
実務者研修が介護福祉士受験に必要な資格になった理由には、「介護福祉士資格の取得方法の見直し」が大きく影響しています。厚生労働省は、今後の介護人材養成の在り方について検討の背景を以下のように報告しています。
高齢化の進展や世帯構造の変化の中で、質の高い介護サービスを安定的に提供していくためには、介護人材の安定的確保・資質
向上が不可欠。 介護福祉士については、資質向上を図る観点から、平成19年に法律改正し、資格取得方法を見直し。
上記の内容を簡単に言い換えれば…。
今後、更に増える高齢者!介護福祉士は多様なニーズに対応できる力が必要!
といたところでしょう。
更に、今までの介護福祉士の業務は「入浴、排せつ、食事その他の介護」とされていました。俗にいう「3大介護」です。
今は「心身の状況に応じた介護」に改正されました。
今後さらに介護が必要となる高齢者の増加が見込まれているため、国としても介護福祉士の資質向上の必要性を感じているようです。資質向上のためには、一定の教育課程で知識や技術を身につけるべき!
このことから、介護福祉士試験の受験資格として実務者研修が組み込まれました。3年の経験だけじゃだめなんですね~。
よくある質問 「実務者研修って自宅学習だけではとれないの?」
仕事と通学の両立は体力的にも時間の確保も難しいですよね。「絶対に通わないと実務者研修ってとれないの?」と思う方も多いでしょう。現在では、実務者研修に通学は必須です。特に、『介護課程Ⅲ』の45時間の学習は通学で行うものです。
【通学で最低限必要な学習時間】
『介護課程Ⅲ』の45時間+『医療的ケア(演習)』(医療的ケアは規定なし)
実際に通ってどうだったか?筆者のリアルな本音
スクールで実務者研修を無事終了した筆者の率直な感想は「面白かった」です。
通う前は…
- 面倒くさい
- 授業中、子どもたちどうしよう
- 勉強が嫌
- 時間がない
と思っていましたが通ってみると…
- 自分よりも年上の受講者が多かったです。40代~60代も沢山いました。
- 介護に対しての考え方が変わった
- 通い慣れると大して面倒ではなかったです。運動不足解消や気分転換になりました。
- 子どもは、あらかじめ日程がすべて出ていたので夫に協力してもらいました。(託児所付きの実務者研修のスクールもあるようですね)
- 介護福祉士の試験出題傾向を知ることが出来たり、他の介護施設の介護士たちと新鮮な情報交換も。
特に現役の介護士さんたちの悩みや現状は、介護士同士でしか分かり合えないところ。同志がいるというだけで、心の支えになり大きな収穫でした。
授業もグループワークが主になり、眠たくなるような授業ではありませんでした。
はじめる前は、本当に面倒な実務者研修。しかし、通ってみれば今自分が当たり前のように行ってきた介護を見直す良い機会になりました。
基本的なケアの方法の理由、その人に合った介護過程などは忙しい現場でも考え方を改められるスキルでした。
私は、実務者研修に通えてよかったなと思います。
これから、「介護福祉士をとろうかな~」と思っている方の参考になれば幸いです。