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創設18年、介護保険制度の歴史と今後の見通し

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1.介護保険制度の創設経緯と基本的な考え方

お爺さんに笑顔で挨拶する女性の介護士

日本の介護保険制度は、今からさかのぼること18年前の2000年に創設されました。

要介護高齢者の増加や介護期間の長期化など、介護ニーズはますます高まる一方で、核家族化の進行や介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族の状況にも変化が現れてきたことなどを背景に、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険制度が創設されたのです。

は、介護保険制度は、どのようなコンセプトで創設されたのでしょうか。介護保険制度を理解するうえで重要となる基本的な考え方を2つご紹介します。

まず1つ目は、要介護高齢者の自立支援、即ち、単に高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念としたことです。

制度創設前の日本では、寝たきりになった高齢者によるいわゆる社会的入院(入院の本来の趣旨を逸脱して、必ずしも治療や退院を前提としない長期入院を続ける状態のこと)の増加が医療費を圧迫し、社会問題化していました。

しかし、実際は、一部の支援により自立した生活が可能な高齢者が寝かせきりにされていた結果、廃用症候群(過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じさまざまな心身の機能低下等)に陥り、生きる意欲や尊厳が奪われているといった悲惨な実情がありました。

当時の日本では、このような実態が徐々に明らかになってきていました。そこで、介護保険制度では、自立支援という目的が掲げられることになった訳ですが、この目的は制度創設をもって即座に達成された訳ではなく、自立を支援するための介護を実現することは、現在も大きな課題の一つとなっています。

もう1つは、介護保険制度を税方式ではなく、社会保険方式としたことです。それまでの公的介護サービスは措置制度(福祉サービスを受ける要件を満たしているかを判断し、また、そのサービスの開始・廃止を法令に基づいた行政権限としての措置により提供する制度)と呼ばれ、税金を財源とし、主に低所得者に国・自治体が社会福祉サービスを提供する仕組みでした。

この当時の仕組みの下では、利用者が低所得で、かつ行政が必要と認めなければサービスが利用できませんでした。そのため、権利保障が不十分で利用者の心理的負担が大きいこと、行政がサービスの種類や事業者を決めるため利用者自身がサービスを選択できないこと、サービスの質を高めるような競争原理が働かないことなどの問題が指摘されていました。

そこで、公的介護保険制度では、給付と負担の関係が明瞭な社会保険方式が採用されることとなり、利用者自身の選択によって、尊厳を持って多様な主体から保健医療サービスや福祉サービスを総合的に受けられる利用者本位の制度が目指されたのです。

2.これまでの主な改正経緯

テーブルに置かれた砂時計

このようなコンセプトのもとで創設された介護保険制度ですが、創設当初から「走りながら考える制度」などといわれ、その後の改正によって様々な梃入れがなされてきました。

2005年の法改正では、状態が比較的軽い軽度な要介護者の数が大幅に増加した状況や、サービスが軽度者の状態の改善・悪化防止に必ずしも繋がっていないなどとする指摘があったことに対し、できる限り要支援・要介護状態にならない、或いは重度化しないよう「介護予防」をより重視したシステムの確立が求められました。

そこで、介護保険制度の基本理念である「自立支援」をより徹底する観点から、当時の給付の一部を再編成し、対象者や給付内容を見直した新たな予防給付(被保険者の要支援状態に関する保険給付)や地域支援事業(被保険者が要介護状態となることの予防等のため、厚生労働省令で定める基準に従って市町村が実施する事業)の創設が図られました。

2011年の法改正では、単身の要介護者や重度の要介護者などが、できる限り在宅生活を継続できるよう、24時間体制で支援できるようなサービスの創設が求められました。

そこで、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が一体的にまたは密接に連携しながら、定期巡回と随時の対応を受けることができるサービス)と、がん末期等の看取り期・病状不安定期を支えることができる複合型サービス(通所介護を中心に利用しながら、必要に応じてショートステイや訪問介護、訪問看護を受けることができるサービス)が新たなサービス類型として追加されました。

2014年の法改正では、軽度者にとってインパクトが大きい、新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」(市町村が行う地域支援事業の一つ、以下「総合事業」と記載)が創設されました。

高齢者の単身世帯等の増加に伴って、軽度な支援が必要なシニア層が増加すると、特に生活支援や介護予防のニーズが高まると考えられますが、既に不足感のある介護専門職では、増加するニーズには到底対応できないのではないかと懸念されていました。

そこで、介護専門職に加え、ボランティア、NPO等の多様な主体が生活支援・介護予防サービスを提供できる枠組みを構築することにより、「サービスの充実」と「介護の担い手の確保」という課題を一体的に解決しようという試みが総合事業の創設という改正に繋がったのです。

2017年の法改正では、制度の充実を図る改正として、全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止に向けて取り組む仕組みの制度化や、地域共生社会の実現に向けた取り組みの一つとして、高齢者と障害児・障害者が同一事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障害福祉制度に新たに共生型サービスを位置付けることなどの改正が行われました。

また、利用者負担割合について、特に所得の高い層に3割負担を導入することや、各医療保険者が第2号被保険者(介護保険制度上、65歳以上は第1号被保険者、40~64歳発症第2号被保険者と定められている)の加入者数に応じて負担している介護納付金を被用者保険間で報酬額に比例した負担とすることなど、制度の持続可能性を高める観点から、被保険者に更なる負担を求める内容も目立ちました。

3.今後、想定される改正の方向性と介護業界への影響

自分の進路とこれらの未来にについて真剣に悩む女子大生

このように公的介護保険制度は改正の都度、そのときの課題を解決に導く方向にその形を変えてきました。では、今後は、どのような改正が想定されるのでしょうか。 

直近の2017年の法改正において、コンセプトの一つとして掲げられた「介護保険制度の持続可能性の確保」。この課題はまだ解決しておらず、むしろ、今後、これまで以上に深刻なものとして、議論の中心となり続けることが考えられるでしょう。

例えば、時期尚早であるとして2017年の法改正に盛り込むことが見送られた「軽度者に対する給付のあり方の見直し」については、「介護保険制度の持続可能性の確保」の観点で、引き続き議論を継続することが示されており、次回以降の法改正で、対応が検討される可能性が高いといえます。

では、介護業界にとってはどのような影響があるでしょうか。もちろん、その事業者が提供しているサービスの種類や利用者層の傾向によって、各事業者が受ける影響度合いは異なりますので、一概には言えません。

しかし、介護業界全体で考えると、要介護度の高い人向けのサービスを維持継続するために、要介護度の低い人向けのサービスの見直しや効率化を進めるトレンドが想定されることから、制度内で対応しきれなくなった軽度者向けサービスの受け皿となる新たな市場が創出される可能性が出てきます。この領域には、様々な業界が参入してくる可能性がありますが、これまで介護分野で培った専門性を駆使して商機を見出すことができる、介護関連業者は、この新市場に対して大きなアドバンテージを持つと考えられます。

4.まとめ

JR富良野線のホームと千代ヶ岡駅舎から続く線路

日本の介護保険制度は医療や看護などと比較するとその歴史は浅く、今後の深刻な高齢化を背景としたニーズの増大を見据え、その形を変えていくことが予想されます。

この今後の改正に伴う介護業界への影響については、様々な見解がありますが、少なくとも、この変遷の中で創出されるであろう、様々な高齢者向けの新市場において、介護業界は大きなアドバンテージを持っているといえます。このような観点で将来性の高い介護業界でキャリアを積むことを検討するのもよいのではないでしょうか。

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