いきなり、初対面の人を前にして「会話してください」と言われても何を話してよいか分かりませんよね。
特に現場が忙しい時、指導者の介護士から「じゃあ、あそこに座っている○○さん(利用者さん)とお話しててください」と言われて困る新人さんは多いのではないでしょうか。
人見知りだと更に会話は難しいですよね。
人手不足の現場では、業務に追われなかなか徹底した新人教育ができません。ベッドへの移乗やトイレ介助の方法は教えてくれても、会話の方法の指導をする施設はほとんどありません。
今回は、会話力アップのポイントと、お風呂の誘導などにすぐに使える具体的な言葉も紹介します。
会話ができないから「介護士辞めたい」は普通のこと
わたしは要領が悪いので、まだ利用者に対する対応や介助がうまくいかず職場に迷惑をかけているような気がします。
あと先輩とも職場の雰囲気にも未だに慣れないし、プリセプターの目が気になって過呼吸になりそうです。新人だからまだ使えないし器用にこなせないというのはわかるけれど、こんな要領が悪く毎日失敗だらけだと鬱になりそうです。
プリセプターにも先輩方からも迷惑がられているのではと毎日心苦しくてしんどいです。引用:けあとも
教育係りの方が1ヶ月ほど付きっきりで指導してくださるんですが、一週間経った今全く業務が覚えられない上に入所者さん達とのコミュニケーションが上手くとれません。
そして新しい職場の雰囲気に馴染めず参っています。
どうやったら業務を早く覚えられるでしょうか?
そして上手くコミュニケーションがとれるでしょうか?引用:けあとも
会話がうまく出来ないことを理由に介護士を辞めようと思う人もいます。
- 先輩介護士は、利用者さんと自然と会話出来ているのに自分はできない
- 利用者さんとの会話が苦痛
- すぐに帰りたいという方、お風呂に入ってくれない方などの声掛けが出来ない
- 「すぐに慣れるよ」と先輩に言われたが慣れない
会話が苦手な方は、上記のような場面にぶつかったことがあるのではないでしょうか。
【余談】ホワイトボードに隠れてレクリエーションの司会をした新人研修時代
筆者も初めて介護の仕事に就いたデイケアで会話が出来ませんでした。会話が苦手で、レクリエーションの司会進行では恥ずかしくてしゃべれなくてホワイトボードの裏に隠れてレクリエーションの司会をしたことがあります。
当然、そのあと先輩たちからお叱りを受けました。同期で入社した子たちは新人教育カリキュラムは先に進みましたが私は、高齢者との会話が苦手でした。それから10年経ち、今は……
- レクリエーション担当でも問題なし
- 会話をすることで体調のちょっとした変化に気付けた
- 難聴の方にも聞き取りやすいと言われるようになった
- 法人の代表で県の講演会で話す
- 取材が来ても対応できる
ここまでになれました。会話力アップは、場数を踏むのも良い手段ですがコツを掴むことで効率よくアップさせることができます。
会話は事前準備で7割はうまくいく!3つのポイント
会話は、事前に準備しておくことでうまくいく確率がアップしますよ。ポイントは以下の3つです。
- 利用者さんの情報を集めておく
- その人が大切にしていることを想像する
- 「相手に話す」ことではなく「相手に聞くこと」を考える
利用者さんの情報を集めておく
個人ファイルが、各施設にありますのでそちらをチェックすると生活歴やお子さんがいるのかチェックできます。また、先輩介護士が話していた内容を真似するのも良いでしょう。会話のネタになりそうなものを紹介します。
- 好きな食べ物
- 出身地
- お子さんの話
- かかりつけの病院の話
- 近所の話
- 昔の歌
女性の利用者さんなら出産や育児の話もしてくれますよ。「海外で言葉が分からない中、出産したの。難産で大変だったの」、「子供は8人産んだわ」など皆さん思った以上にすごいエピソードをお持ちです。
その人が大切にしていることを想像する
その人が大切にしていることを想像しておくと、会話を広げやすくなります。
いつも送迎車が来る前に玄関先で待っていてくれる方には、人を待たせないというポリシーがあるのかな、と思いました。
朝お迎えの際に「いつも、待っていてくださってありがとうございます。寒くないですか?」と言えますし「何時ごろから待っていてくださったんですか?」とたずねることもできます。
また、大切にしていることが分かれば声をかけるタイミングもわかります。演歌好きな利用者さんに、演歌のTVを見ている時に声をかけてもあしらわれてしまいます。好きなことをしている時や熱中している時は、会話は弾みません。
あなたも好きなテレビドラマや映画を観ている時、大好きな漫画を読んでいる時に声をかけられると後にしてほしいですよね。
「相手に話す」ことではなく「相手に聞くこと」を考える
自分の話をして相手に心を開いてもらうことも良いですが、相手に聞きたいことを考えておくと良いですよ。多くの場合、質問を5つ考えて2つ聞けたら良い方です。大抵は、思わぬ方向に会話がそれてしまいます。
自分から話そうとしてしまうと、自分語りになってしまいがちです。相手の話の中で「おや?」と思う所があっても「それは違いますよ」と言わずに、まずは受け止めましょう。
答えてもらえない、そっぽを向かれることは、よくあること!
ちなみに、筆者は新人の時に利用者さんに「ご出身はどちらですか?」と尋ねたところ「そんなこと聞いてどうすんのよ」とそっぽを向かれたこともあります。
その方は、出身地をきくよりも送迎車から見える柿をみて「ほら、柿があんなになっていますよ。今年は生り年なんですね~」や「息が白い。寒くなってきましたね」の方がお話も盛り上がりました。
そっぽを向かれたり答えてもらえないことはよくあることです。
声が小さい、しゃべり方を変えるなどの改善をしてみるのも良いですが、「無視されちゃった……」とクヨクヨすることはありません。本当によくある話なのですから。
話した内容より表情やジェスチャー、身だしなみで印象は変わる
緊張は、声まで緊張が伝わります。緊張した表情は、相手に気持ちが伝わりづらくなってしまいます。
良い例が電話です。
初めて電話する相手が電話ではそっけないように感じたけれど、実際に会ってみるとそんなことはなく好印象だったなんていう経験はありませんか?
自分は、そんなつもりがなくても反応が薄いと思われたり相槌を打っても「本当はそう思ってないでしょ」とズバッと言われることもあります。相手と心地よい会話をするには、意気込み過ぎはNG。自分なりの落ち着く方法を見つけておきましょう。
- 3回深呼吸する
- 背筋を伸ばす
- 表情のチェック
- テンション60%で声をかける
驚いたときは、わかりやすいジェスチャーをつけると相手に驚きが伝わりやすくなりますよ。
現場の介護士が行っている会話のポイントは?
では、現場の介護士さんたちはどのように会話しているのでしょうか。
利用者さんとコミュニケーションを取る事を私は意識してました。話が得意ではないし、盛り上げるのも苦手です。なので、さりげない会話からでも今日のお洋服素敵ですね、、とか今日は晴れていて気持ち良いですね、、とか少しずつでもコミュニケーション取れたら利用者さんも慣れてきてくれると思います。
頑張ってください。最初は誰でも失敗や注意だってありますから引用:けあとも
私は、その方の年代や生活歴を調べて、ヒットしそうな会話をネットで調べて仕入れておくようにしています。
子供の頃流行ったのはどんな遊びか、どんな歌が流行ったのか、どこの地域でうまれたのか、どんな仕事をしていたのか。
高齢者と一口に言っても、70代と90代では価値観も、世相も違いますから、年代別に話題をストックしています。
認知症の方の場合は、細かいことは忘れたとしても、子供の頃の想い出や歌や印象的な出来事には反応されますね。引用:けあとも
皆さん会話をスムーズにつなげるために失敗しながらも、話題をストックするなど工夫しているようですね。
介護現場だからこそ!?誘導で使える4つのワード
利用者さんとお話している介護士をよく観察していると、会話に共通ワードがありました。
共通ワードが出てくるときは、利用者さんが嫌がること(入浴やトイレ)を促すときによく使われます。それが以下の4つのワードです。
- せっかくだし
- ついでに
- 皆さん順番に
- もったいないから
お風呂を嫌がる方が、途中まで服を脱いでいたけれど途中で渋り始めた際に「ここまで脱いだんだし、せっかくだから(お風呂)入っていきましょうか」と誘います。「ついでだから、トイレよっていきましょうか」とトイレに誘導もします。
歯ブラシを嫌がる方は「皆さん順番にご案内します。お次は○○さんお願いしますね」とあらかじめ言っておくこともありました。時代背景もあり、「もったいないから」もしぶしぶと誘導に従ってくれる確率が高い言葉でしたよ。
「会話が怖い」は忘れてはいけない正しい感情
会話が怖いは正しい感情です
筆者自身、10年介護士を続けて会話で失敗することもまだあります。主任クラスの方が軽度の認知症の方との会話で失敗していところも見たこともあります。会話は、経験や場数を踏んでいても失敗しやすいのです。
その時の相手の感情や体調によっては何でもない会話に、腹を立てられることもありますし泣かれることもあります。クレームの電話を入れてくる方もいます。これだけ聞いてしまうと怖いですよね。しかし、会話は避けては通れません。会話によって、その方の体調の変化に気付くこともあります。いつもより声が出ていない、ろれつが回っていないなどは会話から気づける体調の変化です。
また、会話する際に相手の顔を見るので、表情や目の動き、顔色の変化に気付くことができます。会話は、コミュニケ―ションだけではなく体調変化に気付くためのケアの一つなのです。